グラスフェッドバターの栄養素と食べ方まとめ

●グラスフェッドバターとは？

通常、牛には牧草や穀物、更には人工的に作られた栄養剤なども一緒に与え、できるだけ早く成長させるように努めます。それによって回転が早くなるため、利益に繋がりやすく、また狭い土地の多い日本では特にコスト的にも大きく効率が上がります。一方、グラスフェッドバターを作るための牛には、敢えて牧草などの植物性の餌のみを与えて育てるそうです。それによって成長は遅くなりますが、農薬や化学肥料などの蓄積による心配がなくなり、またその牛の乳やその肉には、植物由来の成分が多く含まれるようになると言われています。グラスフェッドバターではそれが理由で「健康に良い」などと言われる事があります。

●グラスフェッドバターに含まれている栄養素

通常のバターはその殆どが脂肪と脂溶性ビタミン（ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK。特にビタミンAが豊富）です。また脂肪は大きく分けて飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2つの種類がありますが、通常のバターでは飽和脂肪酸の比率が非常に大きくなっています。飽和脂肪酸は熱に強く、劣化しにくいため、加熱調理や加工食品に適しています。また安定しているので、エネルギーを手っ取り早く摂取できます。一方、現代人は摂取する機会に恵まれており、過剰摂取によって生活習慣病などのリスクを高めるとも言われています。そのため通常のバターを利用する量によっては、健康を害してしまう可能性があります。

一方、グラスフェッドバターでは、通常のバターよりも不飽和脂肪酸の比率が高いと言われています。不飽和脂肪酸は飽和脂肪酸と違って熱に弱く酸化されやすいですが、人間にとって必要不可欠な必須脂肪酸が含まれています。特にグラスフェッドバターでは、必須脂肪酸の一つである「α-リノレン酸」が豊富に含まれているとされており、これは他の乳製品では殆ど見られない珍しい特徴と言えます。

またグラスフェッドバターには、通常のバターよりも「共役リノール酸（CLA）」という特有の不飽和脂肪酸が含まれていると言われています。この共役リノール酸は、脂肪細胞から脂肪酸が放出される際に働く酵素を補助し、脂肪酸のエネルギー化を促す作用があると言われています。これもグラスフェッドバターにおける特徴の一つと言えます。

その他、通常のバターと同様にグラスフェッドバターには脂溶性ビタミン（ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK。特にビタミンAが豊富）も豊富に含まれています。脂溶性ビタミンは脂肪と一緒に摂取する事で、その吸収率が高まるため、グラスフェッドバターは脂溶性ビタミンの摂取源としても有用です。また不飽和脂肪酸は酸化しやすいですが、ビタミンAやビタミンEには強い抗酸化作用があるため、不飽和脂肪酸の酸化を抑える事ができます。これによりグラスフェッドバターでは、不飽和脂肪酸を効率良く摂取できるようになっていると思われます。

●グラスフェッドバターの食べ方

食べ方は基本的にはバターと同じです。ただし前述のように不飽和脂肪酸は熱に弱く、酸化されやすいです。このため高温・長時間の加熱調理には・・・実はあまり適していません。もちろん前述のようにグラスフェッドバターにはビタミンAやビタミンEなど、脂肪酸の酸化を抑えるビタミンが入っているので、加熱調理に全く利用する事ができないという訳ではないのですが、不飽和脂肪酸をより効率良く摂取する事を考えれば、基本的には食べる直前に料理にかけたり混ぜたりした方が良いと思われます。

もしグラスフェッドバターを加熱調理に利用する場合、なるべく控え目にすると良いでしょう。また脂肪酸の酸化を抑える事ができるような、抗酸化物質を含む食品を一緒に食べると良いでしょう。特にグラスフェッドバターにはビタミンCが不足しているため、ビタミンCを豊富に含む緑黄色野菜や果物を一緒に食べると良いと思われます（ビタミンCも熱に弱いため生食が良い）。

尚、グラスフェッドバターは保存の仕方にも注意しなければなりません。なるべく冷蔵庫、かつ光が入らないような器に密閉しておくと良いでしょう。更に消費もなるべく早くした方が良いです。これも不飽和脂肪酸の影響で、通常のバターよりも劣化しやすいからです。

●グラスフェッドバターは脂肪の塊

グラスフェッドバターは確かに不飽和脂肪酸の割合が大きいです。しかしそれは「通常のバターと比べた時」の話であり、バターはそもそも脂肪の塊です。当然、通常のバター同様、グラスフェッドバターにも飽和脂肪酸は豊富に含まれています。そのため「グラスフェッドバターは健康に良い」からと言って、毎日大量に使ってしまうと、逆に健康を害してしまう可能性があります。量や頻度については管理が必要になるでしょう。またグラスフェッドバターと一緒に組み合わせる食べ物も、なるべく低脂肪のものを選ぶ必要があるでしょう。